Technical Reports on Information and
Computer Science from Kochi
Vol. 1 (2009), No. 3
FFT 法による相関解析を利用した雲画像からの風速取得の試み
東 康敬1, 菊地 時夫2
1. 高知大学大学院理学研究科数理情報科学専攻
2. 高知大学情報科学教室
要旨
高知大学地球環境情報学研究室が運用する「高知大学気象情報頁」には 1994 年以来大量の気象衛星 画像データが保管されている.現在のところ,画像の幾何補正や背景画像(地理情報)を付加した一 般向け画像の作成など基本的処理のみが行われているが,その画像から温度・風向・風速といった情 報を取り出して整理されてはいない.そこで本研究では,時系列として存在する気象衛星画像の相関 関数を求めそれから雲の動き,つまり高層における大気の流れを表す風向・風速を求めることを試み た.本研究で扱う画像は全て「ひまわり 6 号」(MTSAT-1R) によって観測されたもので,北緯 70 度 から南緯 70 度,東経 70 度から西経 150 度の範囲について 4pixel/degree の緯度経度格子にマッピン グされている.この画像を縦横 11 個ずつのセクション(各セクションは緯度経度 10 度)に分け,そ れぞれの中央部分の 32 × 32 pixel を相関解析の対象とした.各セクションについて,1 時間の観測 時間間隔をおいた 2 つの画像から相関関数を求め,その最大値を示す位置 (差) がそのセクションに おける対象物 (雲) の移動量であるとすることができる.実際の計算においては,最大値の周辺 3 × 3 の格子点における相関値を追加して 2 次関数による内挿で最大となる位置を求めている.また各セ クションにおける相関関数を等高線グラフ化することで,計算の有効性を確認している.以上の結果 として,風向・風速を表す矢印を元の雲画像に重ねて表示することができた.この結果をアニメー ションに表すことなどにより,雲の動きから求まる風向・風速を視覚的に容易に捉えることができ, 今後の研究に有効であると思われる.
(2009年3月10日 受付)

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